武村研究室


研究テーマ

武村研究室の主要研究テーマ

(1)新たな巨大ウイルスの探索ならびにその生態学的・進化学的機能の解明
(2)新たに発見した巨大ウイルス「Tokyovirus」、「Mimivirus shirakomae」に関する形態学的・ゲノム科学的・分子生物学的研究
(3)中等教育(中学・高校)において役立つ斬新な分子生物学、進化生物学教育教材・生徒実験の開発研究(平成31年度で終了予定)

それぞれの主要研究テーマの内容

(1)新たな巨大ウイルスの探索ならびにその生態学的・進化学的機能の解明

私たち真核生物は、古細菌(原核生物)がもとになって誕生したと考えられています。特に有名なのはマーグリスが提唱した共生説で、真核生物特有の細胞小器官であるミトコンドリアと葉緑体は、それぞれ好気性細菌と光合成細菌が私たちの祖先の古細菌に共生したことに由来すると考えられています。しかし、真核生物最大の特徴である「細胞核(核)」に関しては、共生説や膜進化説などが林立し、決め手となる仮説はまだありません。そんな中、私は2001年、DNAポリメラーゼの分子系統学的解析から、核の起源は古細菌に感染したDNAウイルスであるとする仮説を提唱しました。同年オーストラリアのベルにより同様の仮説が提唱され、ベルはこれを「Viral Eukaryogenesis」と命名しています。2003年、この仮説を裏付けるような巨大ウイルス「ミミウイルス」がフランスのクラヴェリらにより「再発見」されたことにより、私たちの仮説「細胞核の起源はDNAウイルスである」は、にわかに注目されました。その後、数多くの巨大ウイルス(核細胞質性巨大DNAウイルス:NCLDV)が発見され、それらが私たち生物、とりわけ真核生物の進化にどのように関わってきたのかが、徐々に明らかになりつつあります。武村研究室では、わが国の環境下に生息する巨大ウイルスを探索、同定し、その生態学的な重要性を明らかにするとともに、真核生物の進化にどのように関わってきたのかを解明することを目的としています。現在までに、マルセイユウイルス科に属する新たなウイルス「Tokyovirus」、ミミウイルス科に属する新たなウイルス「Mimivirus shirakomae」等を分離することに成功しており、その解析を行っているところです(以下のテーマ(3)を参照)が、この他にも、様々な水サンプルを採取し、新しい巨大ウイルスを単離することを目指して、研究に取り組んでいます。

(図5) (図5)
真核生物の細胞核はDNAウイルスの祖先がもたらした?
(図6) (図6)
土壌中や水中から巨大ウイルスを探索する
(図7) (図7)
メタゲノム解析によるDNAポリメラーゼ遺伝子の探索
(図8) (図8)
アカントアメーバ株(Acanthamoeba castellanii)の培養

 

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(2)新たに発見した巨大ウイルス「Tokyovirus」、「Mimivirus shirakomae」に関する形態学的・ゲノム科学的・分子生物学的研究

現在、「巨大ウイルス」と呼ばれるものにはいくつかの科があります。ミミウイルス科(Mimiviridae)、パンドラウイルス科(Pandoraviridae)、マルセイユウイルス科(Marseilleviridae)などが代表ですが、古来知られている大型ウイルスを含めると、フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)なども含めることができます。武村研究室では近年、マルセイユウイルス科に属する新規ウイルス「Tokyovirus」を、荒川河川敷の泥水から単離することに成功しました。マルセイユウイルス科は大きく3つのサブグループに分かれますが、ゲノム解析の結果、Tokyovirusはこれらとは異なる第4のサブグループに含まれるのではないかと考えており、現在解析を進めております。
また、日本各地の淡水・海水サンプルから、ミミウイルス科に属するウイルスを単離しております。これまでの遺伝子解析から、ミミウイルス(Acanthamoeba polyphaga mimivirus)と非常によく似たstrainであることが示唆されており、暫定的に「Mimivirus shirakomae」、ならびに「Mimivirus kasaii」と名付けました。このネーミングは、宿主細胞内でウイルス粒子が形成される様子が、あたかも折り紙に似ていることに由来します。現在、ゲノム解析、ウイルス工場におけるDNA複製解析などを急ピッチで行っております。

(図9) (図9)
荒川から分離したTokyovirus
(図10) (図10)
日本の海水サンプルから分離した新規Mimivirus
(図11) (図11)
Tokyovirusゲノム(ドラフト)
(図12) (図12)
新規Mimivirusのウイルス工場。折り紙を折るようにしてカプシドが形成される。

 

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(3)中等教育(中学・高校)において役立つ斬新な分子生物学、進化生物学教育教材・生徒実験の開発研究

武村研究室の創設時(2006年4月)にスタートとした研究課題で、大学院科学教育研究科(平成29年度より大学院理学研究科科学教育専攻)に属する武村研究室の中心的な研究課題です。中等教育における生物教育において、とりわけ教えるのが難しいとされる「分子生物学」や「進化生物学」の領域を中心に、これまでにない新しい教材、新しい生徒実験の開発を目的として、高校教員等と共同して研究を行っています。
これまでに、DNA複製を蛍光標識によって可視化し、生徒がDNAが複製されている“現場”を実際に自分の目で見て確かめることができる生徒実験、米国で開発された架空生物「origami bird」を用いた、生物進化に関する教育効果の高い教材、分子系統樹を作成する新たな生徒実習教材、そしてロールプレイを用いたセントラルドグマの復習のための活動教材の開発などを行ってきました。現在は、発展著しい分子生物学の内容(ゲノム、セントラルドグマ、遺伝子発現等)に関する教育効果の高い新たな教材ならびに生徒実験の開発、真核生物誕生に関する「共生説」をターゲットとした新たな生物教材の開発、免疫学教材の開発、電気泳動やPCRを低価格の材料だけで行う生徒実験の開発などの重要テーマにつき、新しい生物教育のあり方を模索しながら、研究室一丸となって取り組んでいます。
(→生物教育教材ダウンロード)

(図1) (図1)
DNA複製可視化を目指した生徒実験開発の一場面。どうすれば効率よくDNAを伸ばすことができるか?
(図2) (図2)
複製されたDNAを蛍光色素で標識したところ
(図3) (図3)
類似ロールプレイを用いたセントラルドグマの復習のための活動
(図4) (図4)
某私立高校におけるorigami bird実験の実践。ルーレットを利用したDNAの突然変異が、origami birdの進化にどう影響するか?

 

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